gzmlhzmkwq7w3の日記

 自分の趣味とか雑感その他を、気が向いた時に書き連ねる予定です。【2023/12/20追記:昨今の問題について筆者のスタンスを書きましたので、ブログトップに表示しています。】

村下孝蔵さんの楽曲『ロマンスカー』について語りたい

今週のお題「名作」

 

 音楽活動は1999年が最後となってもなお色褪せぬ名曲を多く持ち、筆者が過去に記事を書いたことがあるほど大好きなシンガーソングライター・村下孝蔵さん。

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当記事では、今週のお題「名作」にぴったりの1曲『ロマンスカー』の魅力を語りたいと思います。

ロマンスカー

ロマンスカー

 

 

 前奏でフルートのメロディーに先行して鳴る重く鋭い効果音。実在の特急の名前が付けられた楽曲だけに、電車の車体を思わせる質感です。それに続いてベース中心に刻むリズムとは別に「ッタッタッタッタッタタッタタッ……」と疾走感のあるリズムを刻む楽器音が組み合わさり、列車の走行音あるいは登場人物の焦る心情を表現しているようにも聞こえます。

 そしてこの音が一旦止む時の歌詞がこちら。

“愛情以外は何も 僕らの未来を作れない”

「行き止まりの恋」を描く名手・村下さんならではの、この曲を一言で表す言葉です。ちなみに2番の同じ箇所には

“抱きしめ合うたび何故か 僕らは過去へと逃げてった”

という、1番より大人っぽい歌詞が入ります。そこへ逃げても行き場などないことは分かっているであろう人物像がうかがえます。

“夢を乗せたロマンスカーを何度も見てた 寄り添って”

 今でこそ小田急電鉄の特急列車の呼称として浸透していますが、4人掛け固定シートではなく2人掛け座席(ロマンスシート)を使用した列車という本来のロマンスカーの定義を考慮すると、将来を遮るものから抜け出せない2人の恋愛がどのようなものか、より具体的に想像できるのではないでしょうか。

“踏み切り越し手を振る君の隠れる姿 探して
通り過ぎるロマンスカーに叫んだ声は 風の中”

 映画のワンシーンのような「君」と「僕」の描写です。ちなみに筆者はこの周辺の歌詞夏がだんだん終わってくから、秋の日没後のかなり暗くなった、藍色の空をした時間帯をイメージしました(楽曲のリリースは11月21日でした)。

“海にも山にもいつか 並んで行こうね 手をつなぎ”

 最後の盛り上がりの前に入るこのフレーズ。2人、いえ「僕」がロマンスカーに乗せた夢の無邪気さが切ない。

“君の好きなロマンスカーは 二人の日々を駆け抜け
夢がにじむ遠い夜空に 名もない星が流れた”

ロマンスカー』のシングルと同日に発売されたアルバムの題名「名もない星」の由来に思えてならない歌詞が登場します。
 恋愛の破局と流星を重ねる形容は村下さんの過去の楽曲『夢の跡』にも見られますが、『夢の跡』から10年経った『ロマンスカー』の筆致は円熟味を増した壮年期の歌声に合っている気がします。ここに続く結びの歌詞の

“君はいない”

は、余韻も含めてなんて美しいのでしょう。
 またこの楽曲は前奏・2つの間奏・後奏のいずれも違うメロディーで構成されており、世界観の広がりを保ったままギターとキーボードが盛り立てながらフェードアウトしていくのも素晴らしいと思います。

 

 

 2024年現在CDやアナログLPを購入する以外にも音源の購入・ダウンロードや定額制音楽ストリーミングサービスという手段でも村下さんの楽曲に触れることができるのは、ファンとしても喜ばしいです。

 脳内出血で急逝した村下さんが生前最も好きな楽曲だった『ロマンスカー』は、村下さんの葬儀で出棺の際に流されました。
 その命日である6月24日は村下さんが遺した他の名曲の歌詞と季節にちなみ「五月雨忌」と呼ばれており、一時期活動拠点にしていた広島県にあるラジオ局・RCC中国放送では毎年5~6月に「中四国ライブネット」枠に2時間の特集番組を組んで村下さんを偲んでいます。
 現時点での制作局スケジュールでは6月16日にRCC担当回があるようなので、今年も放送があれば、リクエストを送り、静かに聴きたいと思っています。

 

 

 読んでいただき、ありがとうございました。