変わった趣味だと思うのですが、筆者は人の名前をひたすら眺めることが好きです。
特に宝塚歌劇団については全員が芸名を付けるため、名前全体に込めた思いを推察したり、夢に溢れた音の響きや字のバランスを楽しんだりできるのが大きな魅力だと常々思っています。
というわけで、一度はやってみたいと思っていたタカラジェンヌの芸名統計に挑戦しました。
「2021年度版 宝塚おとめ」(刊:宝塚クリエイティブアーツ)に顔写真付きで掲載されている宝塚歌劇団の現役生徒の芸名に使われている全ての文字(平仮名・片仮名・漢字)をMicrosoft Excelにて集計し、使っている生徒数の多い字を順に並べた表を作成しました。さらにこの表をもとに、芸名に含まれる字を使っている延べ人数(以下「人数和」)が多い生徒を順に並べた表も作成しました。
仮に「佐々木ななお」という架空の人名を例に挙げてみると、佐・々・木・な・おの5文字にそれぞれ1人分ずつ数えた後、人数和を算出する際に「佐+々+木+な×2+お」というふうに通算使用人数を足していくことになります。同じ字が2回登場した場合に人数和の時だけ二重に集計する理由は、「佐々木ななお」と「佐々木なお」のように1文字の有無で印象が変わることがあるためです。「々」のような踊り字や「ょ」のような拗音、「眞」と「真」のような旧字体と新字体は異なる字として集計します。要するに、字の種類と出現回数だけで判定しています。
併記してある画数は各種漢字・漢和辞典を、平仮名の画数は統一概念がないので幼児教育用資料をもとにしました。参考資料などは記事の最後にまとめて記載します。集計ミスがないか確認したのですが、何かしらのミスがあったりお見苦しい図表になっていたりするかもしれませんのでご注意ください。
なお所属組は「2021年度 宝塚おとめ」に準拠し、その後の組替えや退団は反映していません。
せっかくなので集計前に予想を立ててみました。
予想
使っている生徒数の多い字の1位は「美」、2位は「乃」、3位は「月」、4位は「花」、5位は「彩」としてそれらを軸にすると、美花梨乃さん(花組)、海乃美月さん(月組)、彩名美希さん(雪組)、水乃ゆりさん(星組)、美月悠さん(宙組)はトップ5に入るのではないかと考えました。
結果
現役タカラジェンヌが芸名に使っている字の一覧(多い順)
多少ぼやけていますが拡大もしくは画像のコピーで読めるかと思います。
基本データ
「2021年度版 宝塚おとめ」に掲載されているタカラジェンヌ全443名で371種類の字が使われていました。1字当たりの使用人数の平均値は4.8、最頻値1、中央値2ですので、全体として使用頻度の高い字に固まっているわけではなさそうです。
使用者数1位の字は「り」(48名)で、使用者の人数だけで例年の初舞台生の人数を超えています。次いで「美」(36名。漢字では最多)、「ら」「あ」(31名)、「花」(29名)、「乃」(28名)、「希」(27名)、「ゆ」「月」「真」(26名)というトップ10となりました。
芸名に使われていそうな字を集計前にピックアップしておいたところ、下記の字は使われていませんでした(画数順)。
組ごとの傾向
専科は「美」(3/36)、花組は「美」(11/36)と「か」(7/23)が多めな一方、「花」は宙組が最多(9/29)で「華」は星組が最多(8/25)なのが不思議なところです。
月組は「月」(7/26)よりも「蘭」(7/13)の占有率が高く意外でした。雪組は思ったより「彩」は少ない(5/18)ですが「愛」(7/21)と「み」(10/25)は多いです。星組は「央」の占有率が高い(6/10)です。
宙組に「風」が多いのは本当(10/21)でしたし、「楓」と「嵐」を芸名にもつ生徒も1名ずつ所属しているので風を集めまくっていますね。研1生は特に「乃」が多い(5/28)です。
現役タカラジェンヌの芸名の人数和の一覧(多い順)
人数和についてはこのようになりました。簡単にいうと「人数和100を超える」=「自分と同じ字を芸名に使っている延べ人数が100人超え」ということです。
これも多少ぼやけていますが拡大もしくは画像のコピーで読めるかと思います。
基本データ
人数和の最大値は147の華雅りりかさん(花組)、最小値は3の橘幸さん(雪組)。人数和の平均値は56.8、最頻値32、中央値56ですので、平均値と中央値の乖離が少ないことから人数和については特に極端な分布は示していないと考えられます。
筆者がトップ5に入ると予想した5名の人数和と順位はそれぞれ、水乃ゆりさんが108(21位タイ)、海乃美月さんが107(26位)、美花梨乃さんが98(42位タイ)、彩名美希さんが83(83位タイ)、美月悠さんが67(153位タイ)でした。
傾向
平仮名を使った芸名が上位を占めました。これは「2021年度版 宝塚おとめ」127ページのコラムにも書かれていますが、平仮名を使った芸名が現役タカラジェンヌの約半数を占めていることも大きいでしょう。個人的な意見としては、部分的に平仮名を入れて印象を柔らかくしたいとか、芸名がいくつか並んでいる場合に探しやすくなるとかそういった要素を含めて名付けしている可能性も少なからずあると考えています。
「ら」「り」含みが上位になるのは、「くらら」「うらら」「りり」など同じ字を連続させる名前がいくつもあることが大きい気がしますし、特に「ら」の連続は歌のような響きを持っていて歌劇らしさを与える名前に感じるのかもしれません。
予想通りの結果とはならなかったのですが、それもまた一興でした。
ところで、現役タカラジェンヌの芸名をある意味数値化できたということは、世の中の様々な名前がタカラジェンヌだと誰に近いのか算出する、という酔狂な試みも可能になったわけです。
というわけで筆者自ら検証しました。
そのために作成した使用字の一覧(画数ごと)を掲載しておきます。果たしてどうなったのでしょうか?次回をお楽しみに。
読んでいただき、ありがとうございました!
<参考資料>
2021年度版 宝塚おとめ(宝塚クリエイティブアーツ) ※情報源
例解学習漢字辞典第五版(小学館) ※筆者が小学生の時に使っていた漢字辞典
明解漢和辞典第百十七刷(三省堂) ※我が家にある最古の漢和辞典
ちびむすドリル(株式会社パディンハウス) [https://happylilac.net/hiraganahyo-kakizyun.htmlおよびhttps://happylilac.net/katakanahyo-kakizyun.html]
※当記事に掲載している図表は予告なく修正・変更することがありますのでご注意ください。