gzmlhzmkwq7w3の日記

 自分の趣味とか雑感その他を、気が向いた時に書き連ねる予定です。【2023/12/20追記:昨今の問題について筆者のスタンスを書きましたので、ブログトップに表示しています。】

宝塚歌劇団月組公演『フリューゲル』『万華鏡百景色』を現地で観劇できたので感想を書きたい

 約5年ぶりに宝塚大劇場へ行ってきました!


 2020年の『WELCOME TO TAKARAZUKA』『ピガール狂騒曲』観劇を諸般の事情により断念し、次に現地で観るのは月組公演だと心に決めていました。
 というわけで、念願叶った2023年9月7日(木)13時公演の感想を思いのままに書いていきたいと思います。

※実際に観てのお楽しみの部分に触れる記述を含みますので、これから観劇する方はご注意ください。

 

 

ミュージカル「フリューゲル―君がくれた翼―」

 ここ数作は再演や原作付きなど「お手本」があるお芝居が多かった月組の団結力が光っていました。というのも、お話の筋や演出は割と分かりやすく展開の想像も容易な一方で、齊藤吉正先生特有のてんこ盛り感や遊び心が強くてしかも群像劇に近いという、そのバランスが絶妙なんですよね。オリジナルの経験が少ないであろう研1~2の下級生にとっては特に挑戦が多かったのではないかと思いますが、「フリューゲル」が月組の今後の未来にとって大きな実りになってほしいと願っています。

 作品紹介を読みながら「東西ドイツを舞台にしてコミカルでハートウォーミングな作品になるのかな?」と不安だったのですが、実際にそう仕上がっていた点には少し安心しました。齊藤先生らしい細かい役付きだったり下級生に銀橋を複数回渡らせたりしたところ、東西ドイツの壁の向こう側を描くための盆のフル回転や、2幕のショーを思わせるセリフと映像(大劇場デビューの演出家へのエールでもある?)はさすが座付演出家だなあと思った次第です。「S10 時の波」で教会に集う学生たちが逮捕されて閉じ込められる演出の手法は月組生の手際の良さに唸りました。ヘルムート(演:鳳月杏さん)の結末には戸惑いましたが、周囲の喜びように対して追い込まれた彼の心情を思うと納得がいきました。
 どちらかといえば齊藤先生の作品は芝居の方が好き(ショーだと常にクライマックスみたいで時間経過が分からなくなる)なのですが、先生の手掛けるショーのいいところが芝居にもいい具合でミックスされていたように思います。

 気になった点を挙げるとすれば、セリフが聞き取りにくく感じました。詰め込み気味で全体的に早口なセリフが多かったせいか、「月組なのにセリフが聞き取れない?」とびっくりしたんです。コンサートのマイク問題をどうやって解決したのかたった1度の観劇では分かりにくかったし、一方でルイス(演:風間柚乃さん)の正体については曲に乗せると全然聞き取れなかったのでこちらはセリフでしっかり聞かせてほしかったです。ルイスの心の声やヨナス(演:月城かなとさん)とサーシャ(演:天紫珠李さん)を匿うナディア(演:海乃美月さん)の演出はそこまでしなくてもと思いましたし、文化・宗教の描き方も本当にこれでいいのかなとは感じました(『シルクロード』(2021年、雪組)の感想記事に同じ)。あとは挿入歌の歌詞にたびたび登場する「エンゲル」と登場人物のミク・エンゲルス(演:彩みちるさん)が関係あるのかと思ってしまってややこしかった気はします。

 千秋楽のライブ配信と異なり逐一メモを取れなかったため記憶違いもあると思いますが、ここから印象に残った役の生徒さんについて思い出せる限り書いていきます。

  • ポリーナ(演:妃純凛さん)……ソ連KGB諜報員の紅一点。「S3 ドイツ民主共和国」の去り際に髪をかき上げていくのがデキる女って感じで格好良かったです。
  • 東ベルリン市民女(おばあさん)とイルゼ・ベルクマン(演:まのあ澪さん)……市民唯一のおばあさんと、ヨナスの従妹でナディアにサインをねだるイルゼ。どちらもかわいらしかったです。
  • テオ・リヒター社長(演:空城ゆうさん)……ナディアのプロダクション社長。筆者が見た回ではテキトーな台詞が客席に笑いを呼んでいて面白かったです。
  • 二コラ・シューバルト(演:蓮つかささん)……彼の正体は初登場のシーンでなんとなく想像はつくのですが、その通りの暖かい人物像がにじみでる演技でした。ゲスト出演した「ビバ!タカラジェンヌ」(ラジオ関西、8月28日放送分)も聴いていたので、退団公演として注目していました。
  • ルドルフ・ルーク(演:彩音星凪さん)……ちょろい国境警備隊員さん。後からパンフレットを見直したら、あなたがあの彩音星凪さんだったのかと衝撃を受けました。
  • エラ・コッホ(演:咲彩いちごさん)……派手なブティック店員さん。あの髪色といい強そうな振る舞いといい、面白かったです。
  • アメリ・フォーゲル(演:天愛るりあさん)とリン・マイヤー(演:白河りりさん)……アメリのミーハーさが台詞や小芝居によく表れていていいなあと思いましたし、堅いキャラクターをしっかり作っておいての「S11 疑惑」のリンの私服のギャップにやられました。
    ヨナスの同僚たちの「S11 疑惑」での変わりようはパンフレットの漫画家・池田邦彦先生の寄稿文にあらかじめしっかり目を通しておくと分かりやすいと思います。
  • イワン(演:甲海夏帆さん)……おそらく「S13 危機一髪」でもっとも美味しい役。お化粧顔が綺麗だなあと宝塚おとめを読むたびに思っているので、次の公演でのスチール入りに期待しています。
  • ゲッツェ・バウアー(演:彩海せらさん)……板挟みになって揺れ動く青年の役がよく似合うなあと思って見ています。このまままっすぐ成長してほしい(どこ目線?)。
  • アンジー(演:桃歌雪さん)……初めて観に行った公演の研1さんだった100期生が今や研10で、こうして語り手の役割を担っていることに感動しました。メルケル前ドイツ首相がモデルともいわれる役柄。作中の年齢設定は不明ですが、落ち着きと茶目っ気を併せ持った大人をきっちり演じていたと思います。
  • ひときわ小柄でグレーのファッションをしていた東ベルリン市民女(学生かも?)……理由は分かりませんがオペラグラスで自然に追っていました。ル・サンクが出たらどの生徒さんか分かるかな?
  • たしか「S5 真夜中の教会」で軍人と1対1で組んだまま盆に乗って消えていったフリューゲルの誰か……すごい反り方していたなあと強く印象に残り、居姿も美しかったなあと思いました。この生徒さんについてもル・サンクで分かればいいな。

[2023/11/19追記:結局ル・サンクで分からなかったのですが東京公演千秋楽の配信で再確認して情報を集めた結果、

  • 一際グレーで小柄なファッションをしていた東ベルリン市民女(学生かも?)→一部条件は合わないけどおそらく花妃舞音さんか朱鷺あおいさん
  • 軍人と組んで反りながら盆に乗って消えて行ったフリューゲル→八重ひめかさん

のようでした。]

東京詞華集(トウキョウアンソロジー)「万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)」

 和テイストで始まるけど和物ショーとはいえない中盤以降の展開といい、パレード以外を1曲で貫くフィナーレといい、こういうチャレンジングなことをショーのデビュー作でやる土壌といえば月組だなという謎の安心感すらあります。客席で眺めながら筆者の大好きな『バビロン -浮遊する摩天楼-』(2002-2003年、星組)を思い出さずにいられませんでしたが、それを抜きにしても興味深いショーだなあと感じました。
 作・演出の栗田優香先生は初の大劇場作品ということで、大筋のストーリーがあるために場面そのものを過剰に詰め込みすぎずまとまりのある作品になったのは良かったのではないでしょうか。情報量は多いけど、個人的にはショーならこれくらいが好みです。ロケットの構成上の都合もあるとは思いますが、中詰で研1を登場させているのも優しさを感じました。あとは映像化にあたって権利の都合でのカットがないことを祈るのみ。

 ショーについては、印象に残った場面を中心に書いていこうと思います。

  • 「S1骨董屋『序曲~問わず語りの唄』」……「知らざぁ言って聞かせやしょう」で1列に並んで座って歌うところでオペラグラスを覗いたら、最上手にいる付喪神のキリっとした表情が格好良くてこちらの気が引き締まりました。お化粧からいうと娘役かな?見分けに自信がないのがもどかしい。
    「S2 『万華鏡百景色』」……江戸の男女がみんな違う衣装を着て賑やかに動き回るプロローグらしい場面。この衣装でスチール写真を撮ってほしかったなあ(12人くらい付喪神姿になりますね)。
    「S3 吉原遊郭~足抜け」……主題歌の「この花火そこからは見えるだろうか 美し愛しき人よ」の歌詞から展開がつながっているのがいいですよね。ちょっとだけ『BADDY』(2018年、月組)を思い出しました。
  • 「S4 『点灯夫の唄』」……風間さんの出来上がったスターっぷりが楽しかったです。こういう場面をどーんと任せられる存在が3桁期にいる安心感たるや。
    「S5 鹿鳴館美しく青きドナウ』」……外国人の紳士淑女がやや甲高く歌っているのが場面に合っててよかったです。菊の精で素晴らしい回転技を決めていた菜々野ありさん。思い返せば『Rain on Neptune』でも『Deep Sea』でも目を引くダンサーさんだったなあ。
  • 「S7 『銀座煉瓦通り』」……モボ(演:礼華はるさんと彩海さん)とモガ(演:彩さんと白河さん)は作中唯一ハッピーなカップルで楽しそうでした。どこかで見た衣装の女学生3人だと思ってパンプレットを読んだら『夢千鳥』(2021年、宙組)と役名が同じ。栗田先生の遊び心かな。
  • 「S8 『地獄変』」……「地獄変」のおおまかなあらすじだけでも覚えたうえで観てほしい場面です。前の場面で芥川龍之介を演じていた鳳月さんが絵仏師・良秀役となり繰り広げられるこの場面。業S(演:夢奈瑠音さん)をはじめとした業たちのドレスや、娘(演:天紫さん)と猿(演:蘭尚樹さん)を包む炎を赤い布で演出する発想もさることながら、筆者は蘭さん演じる猿の登場シーンのしなやかな身のこなしに感嘆しました。今作での退団が惜しいです。
  • 「S12 『一瞬の邂逅』」……炎を媒介にして「地獄変」の世界観から闇市に転換という、場面のつなぎがすごいのもこのショーの魅力の1つです。幻想の男女担当といえば彩音さん・菜々野さんコンビというイメージがあったのですが、今回は幻想の女を美海そらさんが担当。筆者が唯一ファンレターを送ったことがある元生徒さんの面影を感じるダンサーさんなので少々思い入れもありまして、彼女の踊りをもっと見ていたいなあと思いました。
  • 「S16 『サファリ・ナイト』」……この場面で金髪ショートをアシンメトリーに仕上げてくる海乃さんのセンスすごくないですか?スチール写真が出た時に「トップ娘役だけ和モダンで他の娘役さんがほぼ同じ髪型なのずるくない?」って感想を抱いたんですけど、いざ本番ではベテランらしい的確なセルフプロデュースに脱帽で、むしろこっちでスチール写真出しても良かったんじゃないかな(S2の感想と矛盾することに目をそらしながら)。
    「S17 『万華鏡百景色Rep』」のロケット導入の掛け声も月娘らしいカッコよさでした。
  • 「S20 『Tokyo Rendez-Vous』」……『フリューゲル』のS10 でも思いましたが、四角形の空間に閉じ込められているだけで満員電車の中だと集団で表現できる生徒さんの表現力が素晴らしい。ここで早くも大階段が登場なのですが、渋谷のスクランブル交差点で大階段を使うのもいいなあと思いました。「FREE HUGS」のメッセージを掲げた渋谷の女に目が行ったのですが、どの生徒さんだったんでしょうか。個人的にはパンフレット記載の「死への誘いは災いか、それとも救済か…。」の解説文に、筆者がいま見ている連続テレビドラマ版の「なれの果ての僕ら」(テレビ東京系)を連想して、うっとなりました。
  • 「S22 目抜き通り」……導入の外国語パートを梨花ますみさんがソロで担当。組長さんすごい。そして鳳月さんを中心に娘役たちが集う華やかなフィナーレに突入し、男役群舞。初日のニュース記事を見た時にデュエットダンスの衣装がなんか独特だなあと思ったのですが、花火師と花魁のモチーフをもとにしていることに気付きました。
     そしてここからパレードまでの流れが好きです。デュエットダンスが終わってトップコンビのお辞儀で流れが止まるのは個人的にあまり好きではなくて、今回みたいにオーケストラが演奏している状態で大階段から降りてお辞儀してそのままパレードっていうのがめちゃくちゃストライクなんです。そしてエトワールを務めた麗泉里さんの危なげなく安定感あふれる歌声が良かったです。娘役の組長・副組長が並んで階段下りするのも割と貴重だなあと思って楽しみました。

 筆者は自らの好きなジャンルの楽曲で宝塚歌劇形式のショーのセットリストを組んだことのあるタイプの人間なのですが、正直いうと栗田先生が羨ましいんですよ!全編ストーリー仕立てとか、大階段を出すタイミングとか、フィナーレを1曲で通すとか、この一介のファンの叶わなかった願望と好みをすべて現実にして客席で見せてくれたんですから。もう羨望や嫉妬を通り越して尊敬ですね。
 次はお芝居で栗田先生の作品を観るのを楽しみにしています。

 

座席(1階22列R)の雑感

 筆者の今回の座席は1階22列R3番のA席でした。座席からの風景はこんな感じです(一部加工済み)。


 特にこだわりなく席を選んだのでどのように見えるか逆に楽しみにしていましたが、上手花道での演技が見づらい以外に気になる点はなかったです。『フリューゲル』だとS15のクララ・シュローダー(演:花妃さん)の原稿読み(本舞台にニュース映像が出るので何をしているかは分かる)、『万華鏡百景色』だとS6 の明子(老年)(演:白雪さち花さん)とモボ(演:彩海さん)があまり見えなかったかなと思います。

 とはいえ通路に面しているので前の観客の頭で見えにくいということはないですし、右にも人がいないのでなんとなくゆったりした気分で見られました。いわゆる蛍嬢さん(劇場内係員さん)の待機場所が右前方にあるので、開演前に2-3人組でどういう動きをしているのか観察するのも面白かったです。
 この席だと上演中に途中退席したであろう観客さんと係員さんたちが目の前をしゃがんで何度も移動していくので「そういう席なんだな~」くらいの感覚で流していたら、『フリューゲル』のS15で人民軍の男女が目の前を横切って客席から本舞台に向かっていく演出が始まったのは本当にびっくりしました。びっくりしすぎて誰が通ったか覚えていないくらいです。

 どうも筆者が観た回は他組の生徒さんが数名観劇されていたらしく『万華鏡百景色』の客席降りがなんだかすごいことになっていたようなのですが、筆者は座席の隣のブロックの正面に降りてきた英かおとさんと本舞台をちらちら見るのに忙しくて気付きませんでした。英さんは5列くらい後ろのほうに向かって楽しそうにファンサービスしつつ踊っていて、スタイルが良くてカッコよかった、という小学生みたいな感想しか浮かばなくて申し訳ないです。

 

 思いの向くままに書いたのでただの駄文乱文になってしまいました。

 実は今回の観劇には他の目的もあったので、そうした意味でも1泊2日の充実した旅行になりました。後日別の記事で公開する予定ですので、そちらもお楽しみいただけると幸いです。


[2023/12/25追記:他の目的についての記事を公開しました!

gzmlhzmkwq7w3.hatenablog.com]

 読んでいただき、ありがとうございました!